─ 知っておきたい「感作リスクのある成分」の話 ─
前回のおさらい
前回の記事【第4回】では、アレルギー性と刺激性の症状の見分け方について解説しました。今回からは「なぜアレルギーが起きるのか」という原因の話に入っていきます。まずは、ジェルネイル製品に含まれる成分と、そのリスクについて見ていきましょう。
ジェルネイルが固まる仕組みから考える
ジェルネイルは、UVやLEDライトを当てることで固まります。この硬化の正体は、「アクリレートモノマー」と呼ばれる化学成分が光のエネルギーを受けて互いに結びつく化学反応です。
ポイントは、液体(未硬化)の状態のときに問題が起きやすいということ。硬化後のジェルは安定していて皮膚への影響は少ないのですが、施術中の未硬化ジェルが皮膚にわずかでも触れ続けることで、体が「これは危険なものだ」と学習してしまう可能性があります。これが感作、つまりアレルギー体質が作られる瞬間です。
特に注意が必要な成分
アクリレート系の成分はたくさんありますが、なかでも代表的なものを2つ紹介します。
① HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)
ジェルネイル製品に非常に広く使われている成分で、ジェルの密着力を高める働きがあります。その一方で、感作(アレルギー体質をつくること)を起こしやすい成分としても知られており、アレルギー性接触皮膚炎の原因として報告される頻度が高い成分のひとつです。
② Di-HEMA TMHDC(ジカルバミン酸ジHEMAトリメチルヘキシル)
近年、アレルギー報告が増加しているとして注目されている成分です。欧州ではすでに規制の対象となっており、日本でも業界内での認知が広がっています。
「入っていれば必ずなる」わけではない
ここで大切なのが、「この成分が含まれていれば必ずアレルギーになる」というわけではないということです。アレルギーが発症するかどうかは、成分の種類だけでなく、触れる頻度・量・個人の体質など、さまざまな要因が重なって決まります(リスク要因については次回詳しく解説します)。
だからこそ大切なのは、未硬化ジェルが皮膚に触れる機会を減らすこと。施術中の丁寧な拭き取り、皮膚への付着を避ける塗り方、適切な硬化時間の確保──これらの積み重ねが、日常的なリスク管理の基本になります。
まとめ:覚えておきたい3つのポイント
① 未硬化ジェルが皮膚に触れることがリスクの起点
② HEMAやDi-HEMA TMHDCは感作リスクが指摘される代表的成分
③ 成分名より「触れさせない」習慣が予防の基本
注意:成分表示だけでは判断できない
製品の成分表(全成分表示)を見れば使われている成分を確認することはできます。しかし、自分がすでに感作されているかどうか、どの成分に反応しているかは、皮膚科でのパッチテストでしか確定できません。症状が気になる方は、自己判断せずに専門医へご相談ください。
【次回予告】 次回【第6回】は、「なりやすい人・なりにくい人」の違いとは?アレルギーが起きやすいリスク要因を掘り下げます。
【免責事項】 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。症状がある場合は、皮膚科専門医へのご相談をおすすめします。
【参考文献】
- 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」
- Gonçalo M, et al. “The EU Cosmetic Regulation and contact allergy to nail products.” Contact Dermatitis. 2022. DOI: 10.1111/cod.14137
- Basketter DA, et al. “Acrylates in artificial nails.” Contact Dermatitis. 2020.
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